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ながとし先生のセールス談義
1. セールスパーソンとはなにか

2. ターゲティングとはなにか

3. ネゴを進展させるとはどういうことか

4. セールスステップとはなにか

5. 提案書とはなにか(いつ提出すべきなのか)

6. まとめ(ながとし先生のコアコンセプト)
# by htc_ingk | 2011-05-09 16:07 | セールス談義
1. セールスパーソンとはなにか
「セールスパーソン」とはなんだろう。

一般的には「セールスマン」あるいは「営業マン」のことだが、男女差別を極端に気にする米国を中心に、今ではそれらを「セールスパーソン」と呼ぶ。

どんな会社も、セールスパーソンが売ってくれなければ存続できない。
その意味では、セールスパーソンは、会社の人たちを「食わせる」所帯主と言ってもいい。

それにもかかわらず、社長や他部門の人たちが「うちのセールスは力がないから…」と嘆くのは、「うちの父ちゃんは甲斐性がなくて…」と他人事のように言う女房や子供たちと同じで、セールスパーソンにとっては失礼な話だ。

「父ちゃんのおかげで何とか食えてるんだから、父ちゃんがんばってね。応援するから。」
というのが筋ではないか。
セールスパーソンに文句を言う前に、会社として十分なバックアップをしているかどうかを問うのが先ではないかと思う。

どんなにいい商品を開発する部門があっても、どんなに優秀な管理部門があっても、どんなに能力のある経営者がいても、セールスパーソンが「売る気」にならなければどうにもならない。

セールスパーソンに売る気を起こさせるさまざまな「しくみ」や「しかけ」があり、会社としての十分なバックアップが成立していることが、セールスパーソンに「その責任を問う」前提となるはずだ。

売り上げ低迷に悩んでいるほとんどの会社には、この前提がない。

セールスパーソンの向こう側には「お客様」がいる。
お客様が買ってくれなければ会社は成り立たない。
会社にとって一番大事なのはお客様だ。

だとすれば、そのお客様に買ってもらう仕事をしているセールスパーソンが、会社にとって二番目に大事なのはすぐに気づけるはずだ。そのセールスパーソンに「やる気」を起こさせるために、会社の他の全員が心を砕くのはむしろ当然ではないか。

こうした前提が出来上がっている会社ならば、セールスパーソンにこう言って勇気付けることができる。

「セールスパーソンの仕事は、毎日さまざまな人に出会い、教わり、人生を深めることのできるすばらしい仕事だ。人間的に成長する機会を与えられるばかりか、人脈という財産を与えられる幸せな仕事だと思う。だから自分自身のためにも頑張ってほしい。」

こういう環境を与えられて発奮しないセールスパーソンはまずいない。
それでも「勉強しない」「向上しようと努力しない」「売ることに価値を見出せない」セールスパーソンは、もはや「所帯主」の資格はないのだから辞めてもらえばいい。

ところで、セールスパーソンは一体なにを売るのだろうか。

最終的には「会社の商品」だが、そのためには「会社そのもの」を売らなければならない。
会社そのものとは、会社の理念であり、会社全体を貫く考え方の総称である。
それは、単に、作られた耳障りのよい会社メッセージのことではない。会社が本音で思っている「お客様への気持ち」そのもののことだ。

その「会社の本音メッセージ」にセールスパーソンが共感できたとき、彼は初めて自信を持って自社の「商品」を売ることができる。

つまり、「売る人」はセールスパーソンだけではないのだ。
会社を構成するすべての人たちが「なにを売るのか」を知っていることが、セールスパーソンのパワーの源泉になるのだ。

それでは、お客様はなにを買うのだろう。

最終的にお客様が買うのは、会社とその商品のお客様にとっての「価値」である。
その判断の前提として不可欠なものは「信頼」である。
会社と、商品と、セールスパーソンを、信頼できるかどうかだ。

その意味で、セールスパーソンの果たす役割はきわめて重要である。
セールスパーソンへの信頼が、すべてのネゴの始まりであり終わりでもあるからだ。

お客様はセールスパーソンと会うたびに「信頼できる相手かどうか」を観察する。
「わが社に本気で興味を持っているか?」
「わが社を取り巻く業界に関心を持っているか?」
「わが社にとって有意義な情報を持ってくるか?」
「わが社の本当の問題点を的確に把握しているか?」
「問題点を解決する意欲と能力を持っているか?」
「私の考え方の核心をつかんでいるか?」
「売らんがための嘘をつくことはないか?」

これらのテストに合格しない限り、お客様はそのセールスパーソンと会い続けることはないから、ネゴになる可能性もない。
なにかの偶然でネゴになったとしても、受注する可能性はきわめて低くなる。

まとめよう。

「売る」とはどういうことなのか。
そのための手っ取り早いハウツーなどはない。
当たり前のことを、当たり前にやり続ければ、必ず買ってくれる(売るのではない)。

会社が当たり前のことを(セールスパーソンに対してもお客様に対しても)やり、セールスパーソンが当たり前のことをやり続ければ、「自然に売れる」のだ。

売れないで悩んでいる会社は、この(自分たちがやるべき)「当たり前のこと」に気づいていない。
# by htc_ingk | 2011-05-09 16:06 | セールス談義
2. ターゲティングとはなにか
「ターゲティング」とは、自社の商品やサービスが最もよく適合するマーケットを定義することである。

自社が持つ既存の技術やノウハウを組み合わせた、いわゆるプロダクトアウト型の商品やサービスであっても、いくつかのユーザー事例に基づく、いわゆるマーケットイン型の商品やサービスであっても、「仮想のユーザーニーズ」に適合するかどうかの見極めが必要であることに変わりはない。

ターゲットの絞込み(ターゲットの定義)が不十分なまま見切り発車をしてしまうと、さまざまな混乱が起こる。

セールスパーソンはその活動を進める過程で、仮想のユーザーニーズと異なる多様なユーザー二―ズに出会うことになる。
その際ターゲットが明確になっていないと、提供しようとしている商品やサービスが適合しないそれらのニーズを例外として無視すべきなのか、それとも仮想ニーズを補う有用なニーズの発見なのかがわからなくなる。

セールスパーソンがこの点で迷えば、開発部門も適切な判断ができなくなり、やがては会社全体がその商品やサービスの適合性に疑問を持つようになる。というよりもむしろその前に、セールスパーソン自身が商品やサービスに確信がもてないから、「売れない」状況を作り出してしまう。

ターゲットの絞込みが十分できていれば、活動の結果得られる新しい情報のほとんどは、商品やサービスの改善に役立つ有用情報である可能性がそれだけ高くなり、こうした無用の混乱は少なくなる。

開発部門は迷わずそれらを改善し、セールスパーソンは活動すればするほど商品やサービスが向上してゆくのが見えるから、ますます自信を持って「売れる」状況を作り出すことができる。

ターゲットと商品の相関度が高ければ高いほど、成功率が高いのは当たり前の話なのだ。
孫子の兵法でいう「知彼知己者、百戰不殆」「不知彼而知己、一勝一負」「不知彼不知己、毎戰必殆」をそれぞれ、以下のように翻訳すればそのことがわかる。
「顧客のニーズを知り、それに適合する商品を持って戦えば、百戦百勝」
「顧客のニーズを知らずに、商品力を過信して戦えば、勝ち負けは五分五分」
「顧客のニーズも知らず、商品の価値も知らずに戦えば、百戦百敗」

「そんなことはわかっているが、絞込みに時間をかけるよりも、少しでも(競合他社よりも)早く活動を開始したいのだ」というのが大方の本音だろう。
その場合でも方法はある。

たとえば、その商品やサービスの適合可能なターゲットが、A、B、C、と3種類考えられるなら、その中で最も可能性が高いと思えるB ターゲットに絞ってテスト販売をしてみればよい。

全部のターゲットに同時にアプローチするより、はるかに早い時間でB ターゲットへの適合性が判断できる。どのみち「仮説」でスタートするのだから、その仮説の正否の判断はできるだけ短時間ですべきなのだ。

B ターゲットが不適合だと判断できたら、AターゲットなりBターゲットに次のテスト販売を行えばいい。
この方法なら無用な混乱は起きない。

前回の「セールスパーソンとはなにか」でも述べたことだが、セールスパーソンのやる気や自信を引き出すために、会社としてやるべき支援の中でこの「ターゲティング」は最も大きな部分を占めている。
「このターゲットに」「この商品を」もってゆけば、「必ず売れる」という確信と成功体験を、セールスパーソンに与える最も重要な前提だからだ。

この当たり前のことがきちんとできていない会社は、その「できていない」事実に気づいていない場合が多い。
「ターゲットは団塊の世代のジュニア層だ」とか「外食チェーンで100店舗規模の層だ」といったレベルの定義をして、それでターゲティングができたと勘違いしているのだ。

「団塊の世代のジュニア層」だったらだれでも同じものを欲しがるのか?
「100店舗規模の外食チェーン」の経営者ならみんな同じ課題に悩んでいるのか?

団塊の世代のジュニア層の中でも、ライフスタイル、趣味趣向、家族環境、経済環境がすべて違うはずだ。犬好きもいれば猫好きもいる。写真好き、美術好き、スポーツ好き、ボランティア好き、といくらでも枝分かれしてゆく。
100店舗規模の外食チェーンにしても同じである。社長の個性や経営姿勢、社員のレベルや意識、業態や業種、競合環境、キャッシュフローの状態、・・・。

本来のターゲティングとは、この面倒なパズルのような細かい要素を分析し組み立てて行くことで、「顔の見えるターゲット像」を作り上げるプロセスなのだ。
そしてその仮想のターゲット像が特定できてはじめて、この商品やサービスのそのターゲットに対する「価値」を論じられるのだ。

「その人たちは、この商品を欲しいと思う(価値を理解する)だろうか」
「その人たちが、この商品を買うとすればその決定的な理由はなんだろうか」
というふうに。

これらについて納得のゆくまで議論した会社のセールスパーソンは強い。
なぜなら彼は、相手がどんな相手かを熟知し、その相手の要求を満たす自社商品を信じて戦うからだ。
まさに「知彼知己者、百戰不殆」なのだ。
# by htc_ingk | 2011-05-09 16:05 | セールス談義
3. ネゴを進展させるとはどういうことか
まず、「商談」と「ネゴ」ははっきり区別する必要がある。
お客様からの直接の「引き合い」や、誰かからの紹介による「案件」は、たしかに「商談」ではあるが未だ「ネゴ」ではない。

「ネゴ」とは、お客様のその商品への関心が明らかにあると確認できた商談で、さらに、お客様が売り手との「継続的な話し合いの意志」を持っている状況を言う。

つまり、お客様の商品への関心が本物かどうかわからない状態や、売り手の継続的なコンタクトを受け容れる意志があいまいな状態は、商談ではあっても「ネゴ」とは呼ばないということだ。

すべての引き合いや案件は、この「商談」というステータスから始まり、お客様の「本気度」が確認され、継続的コンタクトが実現したときに、はじめて「ネゴ」としてスタートすることになる。

ネゴがスタートしたら、真っ先に必要なのは「ネゴの構造を知る」ことである。

「ネゴの構造」とは、そのネゴを構成するすべての登場人物たちの利害関係を指す。
ネゴを構成する登場人物とは、お客様、紹介者、アライアンスパートナー、競合他社、そしてそれらの登場人物たちに影響力のある第三者、のすべてを言う。

それぞれの登場人物が、どんな利害得失関係にあり、互いにどんな力関係にあるのかを、図示して構造化できることが「ネゴの構造を知る」ことの意味である。

はじめにこの構造を把握していないと、どこの誰にどんな働きかけをすべきかという、最も基本的な戦略が成り立たない。

次に必要なことは、「対象顧客の構造を知る」ということだ。

「対象顧客の構造」とは、お客様の業界内での地位や立場、お客様のニーズとそれに対応する投資可能額、お客様の組織、決定プロセスに登場する人たちの力関係、などを言う。

誰がニーズを定義するのか、誰が予算を決定するのか、誰が最終決裁をするのか、誰が抵抗勢力になる可能性があるのか、ニーズを満たすことで誰が得をするのか、といった構造が図示できる状態になってはじめて、戦いの準備ができるようになる。

売れない症候群に陥っている会社のほとんどは、これらの「ネゴの構造」や「顧客の構造」が不明確なままネゴ(戦い)に入ってしまっている。

その結果、提案書の内容が魅力的でなかったり、説得力が不足していたり、あるいはまた、提案書の提出タイミングを間違えたり、ネゴが思い通りに進展しないことに焦って右往左往することになる。

「戦場の状況」を知らずにネゴを始める(戦場に出る)ことが、どんなに戦況を難しくしているのかを知る必要がある。

さて、「ネゴの構造」や「対象顧客の構造」を知った上でネゴを始めたとしよう。
次に必要なことは、「ネゴのシナリオづくり」である。

どこの誰にどう働きかければよいのか、その順番はどうすればいいのか、そのためにどんな方法があるのか、を整理して紙に書いてみるのだ。

エベレストの登頂を志す人が、何年も掛けて周到な準備をするのと同じで、ネゴのゴール(受注)を目指すのに周到なシナリオが必要なのは当然だろう。
いい加減な準備しかしないアルピニストをエベレストが拒否するように、シナリオなしで行き当たりばったりの行動しかしないセールスパーソンを、お客様は決して受け容れない。

どんなに周到な登山計画があっても、突然の天候変化や体調不良などで登頂をあきらめざるを得ないこともある。それはしかし、人の命が懸かっている登山の話だ。
セールスの場合にはそれはない。

起こりうるすべてのネガティブな状況を予想したシナリオであれば、たとえ不測の事態が起こっても、冷静さを失わない限り修正は可能であり、ゴールをあきらめる必要もない。
セールスのネゴは(たとえ失敗したとしても)、人の命に関わる問題ではないからだ。

ネゴを発掘するために、最低限必要な3つのこと、「ネゴの構造」「対象顧客の構造」そして「ネゴのシナリオづくり」について述べてきた。
次回は、そのシナリオを実現するための詳細について述べよう。
それは、わたしが「セールスステップ」と呼ぶもののことだ。
# by htc_ingk | 2011-05-09 16:04 | セールス談義
4. セールスステップとはなにか
「セールスステップ」とは、セールスのゴール(受注)を目指すために昇らなければならない「階段」を示すものである。
「ものづくり」で言えば、工程表のようなものである。

ながとし先生独自のセールスステップには、全部で14段の階段があり、「階段」の一つ一つには、その階段で「やらなければいけないこと」が定義されている。

それぞれの階段は、以下の4つのフェーズに分けられている。

(フェーズ1)5つの「準備の階段」
(フェーズ2)4つの「ネゴ作りの階段」
(フェーズ3)3つの「ネゴクロージングの階段」
(フェーズ4)2つの「フォローの階段」

いくつかの節目の階段やフェーズでは、「やってはいけないこと」を含む「ルール」も記述されている。

14の階段と4つのフェーズに定義する理由は、セールスの始まりから終わりまでのすべての局面で、自分が今どの階段に居るのか、どのフェーズに居るのかを、できるだけ「客観的に」把握するためである。

「売りたい」という欲を捨てきれないセールスパーソンにとって、「主観的な」状況把握はしばしば危険である。

そうしたセールスパーソンが犯しやすい主観的なミスジャッジの例は、たとえば、「売れる状況になっていないのに、売れると思い込んで提案書や見積書を提出する」とか、その逆に、「顧客がひそかに買う気になっているのに、売れないと思い込んで引っ込んでしまう」といったことだ。

これらはすべて、「売りたい欲」のメガネが現実を客観視できないことから起こるのだ。

「現実」の状況をできるだけ客観的に把握するためには、できるだけ多くのチェックポイント(すなわち階段)をつくり、それぞれを明確に定義することが必要になる。
つまり、自分が今居る階段がどこなのかを、それぞれのセールスパーソンに感覚で判断させないためには、それぞれの階段の特性を「明確な言葉で」定義する必要があるのだ。

14の階段と4つのフェーズを定義する利点の一つは、こうして明確に定義された階段の位置を知ることによって、そのネゴ自体が、どの程度受注という最終ゴールに近いのか、あるいは遠いのかが判断できるようになることだ。

もう一つの利点は、それぞれの位置を「記号化」し、それらの記号を使って毎日の活動結果を記録することで、ネゴの進展率や階段間の移動に掛かった日数から、正確な売り上げ予測ができるようになることだ。

つまり、フェーズ2のネゴ作りの階段に何件の案件があり、フェーズ3のクロージングの階段に何件のネゴがあるかがわかれば、それぞれのセールスパーソン固有の「平均進展率」と「階段間の平均移動日数」から、精度の高い売り上げ予測が可能になるのだ。

ここでは、これ以上詳しく説明できないが、

「セールスステップ」という考え方が、どれだけセールスパーソンの主観によるミスジャッジを防ぎ、セールスパーソンの作業効率を高め、精度の高い売り上げ予測を可能にするか、ひいてはセールスパーソン自身の能力を高める働きがあるか、を想像していただければ十分である。


(フェーズ1) 初回訪問までのセールスステップ

▼ステップ1
自社商品の「存在意義」と販売の「可能性」を理解し、さまざまな売り方や利用例のパターンを考える。
(商品の「存在意義」と販売の「可能性」について疑問があるなら、このステップですべてクリアしておく。)
▼ステップ2
売り方や利用例のパターンに当てはまるターゲットマーケットを選択し、すべてのターゲットをリストアップする。
(そのターゲティングが妥当かどうかを、充分に検討する。)
▼ステップ3
ターゲットのライトパーソンを想定し、そのライトパーソンと会う方策を考える。
ライトパーソンを紹介してくれそうな人を探す。紹介者がいなければ、「会ってもらえる理由付け」を考えてからアプローチしてアポをとる。
(この場合、ライトパーソンとは、単に「検討する担当者」ではなく「決定権を持つ人」を指す。)
▼ステップ4
初回訪問に必要な準備をする。
会社年鑑、四季報あるいはホームページを確認して、そのターゲットの業態や商品あるいはその業界について、できるだけ広い情報を得ておく。
▼ステップ5
初回訪問に持参するドキュメントを準備する。
できれば、「サーベイシート」を用意して、クライアントについての必要情報をもれなくヒアリングできるように準備する。

<フェーズ1のルール>
上記ステップのすべてを行う前に「訪問してはならない」。
唯一の例外は、ステップ3の「ライトパーソン」が確認できない場合。
その場合はステップ6以降の訪問で、できるだけ早く「本当の」ライトパーソンを見つけ出す必要がある。


(フェーズ2) 初回訪問からネゴ作りまでのセールスステップ

▼ステップ6
初回訪問(VS訪問*1)をする。
VS訪問は、「売る」ための訪問ではなく、信用を「得る」ための訪問であることを忘れないようにする。
相手の仕事の内容を「興味をもって」聴き、できるだけたくさんの質問をする。
(相手の状況をできるだけ正確につかむのが、この訪問の目的。)

<ステップ6のルール>
「売りたい気持ち」を抑えて、「情報収集」に専念する。
商品を「売る」のではなく、信用を「得る」のだ。

*「ステップ7、8の検討に必要な情報が得られるまで」このステップを繰り返す。
*1:Visit Servey:調査のための訪問(ステップ6~8)

▼ステップ7
訪問の結果得られたクライアント情報から、過去のどのパターンあるいは利用例がクライアントを納得させるかを検討する。
クライアントが訪問時に示した、「関心の方向」について冷静に検討する。
▼ステップ8
クライアントの現在の関心をネゴにまで引き上げるための、シナリオを何通りか考える。
その際障害となる要素はなにか、「販促ツール」をシナリオのどのタイミングで使うか、デモやセミナーに呼べるか、等・・・。
▼ステップ9
シナリオに沿って、以降の訪問(VA訪問*2)活動をする。
クライアントの「単なる関心」を「ネゴのレベル」に引き上げるのが、これらの訪問の目的。クライアントの反応が、ポジティブ、ネガティブ、不明、のいずれに感じられても、それがクライアントの本当の反応かどうかは、さまざまな方法で検証してみないとわからない。
相手は本当にライトパーソンなのか、クライアントの業績はどうか、相手の関心は別のことに向いているのではないか、競合の存在は、等・・・。

<ステップ9のルール>
提案書を出すタイミング、見積書を出すタイミング、を誤らないこと。
ステップ10の「前提」状況が、「少しでも見え始めるまで」はネゴと判断してはならない。

*2:Visit Advance:進捗訪問(ステップ9)


(フェーズ3) ネゴ成立からクロージングまでのセールスステップ

前提:ステップ9までの活動を通じてネゴの成立が確認されたケースでは、クライアントのライトパーソンは、およそ以下の状況にあると考えられる。
1)提案書に書かれている導入効果は本当に信じていいのだろうか。
2)導入の費用は適正なのだろうか。
3)競合製品はどうなのだろう。導入費用の比較をしなければ。
4)同業他社への導入事例はあるのだろうか。

▼ステップ10
ネゴクライアントの導入に対する「不安」「抵抗感」「迷い」の内容と、その本当の理由を確かめるための訪問をする。(VC*3 訪問
直接的な聞き方で確かめるのか、間接的な確かめ方のほうがいいか、をよく考える。ライトパーソンを紹介してくれた人、あるいは第三者を通じて、ライトパーソンの本音を聞き出すこともできる。

<ステップ10のルール>
「決断できない本当の理由」を聞き出すことに専念する。

▼ステップ11
ライトパーソンの導入に対する「不安」「抵抗感」「迷い」の原因が把握できたら、それらをひとつひとつ顧客と一緒に解決してゆく。
(神父のように優しく、決して売り手としての態度ではなく。)

<ステップ11のルール>
すべての不安を「同時に振り払おう」としない。
一つ一つの不安に丁寧に対応する。

▼ステップ12
ネゴのクロージング
懸案の一つ一つがすべて解決できましたね、ということを整理して説明し、ライトパーソンに確認してもらった上で「最終提案書」と「最終見積書」を提出する。

<ステップ12のルール>
発注書を楽しみに待っていますという「余裕の態度」を示すこと。

*3:Visit Closing:詰めの訪問(ステップ10~12)

(フェーズ4) フォローのセールスステップ

▼ステップ13
商品(システム)の納入とテストラン(VF*4訪問
完璧な準備、予定日どおりの納入、ていねいな納入立会い、など「売りっぱなしセールス」でないことを、態度で示す。
▼ステップ14
稼動後の状況を確認する。(F訪問)
少なくとも、納入日から3ヶ月間の間に何回か「いかがですか?」
「問題はありませんか?」などを真摯に尋ねる。
*4:Visit Follow:アフターケア訪問

■アフターフォローの重要性

①新たなネゴ作りの機会にする
予算の関係で、本来必要なフルスペックの商品が販売できずに簡易スペックを納入したようなケースでは、しばらくの間使用したユーザーがその問題点を再び意識する可能性がある。
これを「放っておく」と、競合他社の餌食になりかねない。
少なくとも、納入後3ヶ月の単位で何回か、バージョンアップの可能性を探る必要がある。
単なるあいさつ訪問をするのではなく、新たなネゴ作りの「機会」としてアフターフォローを捉えてほしい。
こうしたアフターフォローの結果、たとえバージョンアップのネゴが成立しなくても、失うものは何もない。
ユーザーから、システムそのものの評価や、ヒントが得られるばかりでなく、業界他社の動向など、さまざまな生きた情報を手にいれることができるかもしれないからだ。

②モデルユーザーになってもらう
導入効果を実感しているユーザーには、モデルユーザーになってもらうよう働きかける。これは、ネゴクライアントをモデルユーザー案内して、「ユーザー事例デモ」を見せるためである。
導入効果を実感しているユーザーは、「モデルユーザー」と呼ばれることと、他社が検討のために自社を訪れることを、基本的に嫌がらないことが多い。
なぜなら、「モデルユーザー」の称号は、自社が導入の成功者であることを認められたことであり、その成功事例を他者に自慢もしてみたいからである。
こうしたモデルユーザーを増やすことによって、新しいネゴのクロージングの効率を高めることもできるし、モデルユーサー自身が自社商品を積極的に紹介してくれる「よき販売者」ともなり得る。


# by htc_ingk | 2011-05-09 16:03 | セールス談義